描くこと、つくること=表現あそび
保育園や幼稚園は子どもが望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、健康、人間関係、環境、言葉、表現という5つの領域を満遍なく経験することが大切であるとされています。これは保育所保育指針や幼稚園教育要領にも記載されていることです。
その5つの領域の中の「表現」に含まれる、描くこと、つくることが乳幼児期になぜ大切なのかを書いていきたいと思います。
そもそも「表現」ってどういうこと?
表現とは”感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにすること”と、保育所保育指針や幼稚園教育要領には記されています。これを読んでも、なかなかピンときませんね。もっとかみ砕いていうと、要するに、自分の思いや考えたことを描いたり、作ったり、身体を使ったりして表現するということです。例えば、大人に置き換えて考えてみると、なにか良いことがあった時、みなさんはどうしますか。逆になにか嫌なことがあった時は…?美味しいごはんを食べたり、ゆっくりお風呂に入ったり、心の許す友だちと話したり、、他にもさまざまなことが頭に浮かんでいらっしゃるかなと思います。…そう!それが、表現なのです。大人にとっての表現なのです。子どもの自己表現は、泣くことや一見乱暴にみえる行為などで、その時の自分の気持ちを訴えることもあったり、音楽を聴いたり、絵本を見たり、つくったり、かいたり、歌ったり、音楽や言葉などに合わせて身体を動かしたり、何かになったつもりになったりして遊ぶことであったりするのです。
なぜ、表現することが大切なの?
大人のみなさんは、なにか嬉しいことがあった時、それを誰かに伝え、共有することでより充実感を得たり、嫌なことがあった時には、上の項目で書いた方法等で発散し、スッキリして前を向けたり、気持ちを切り替えたりできることがあると思います。それと子どもも一緒なのです。子どもは、毎日の生活の中で、身近な自然や、親や保育者、友だちと関わりながら生活をしています。そこに不思議さや面白さなどを見つけ、美しさや優しさなどを感じ、心を動かしています。そのような心の動きをさまざまな方法で表現しているのです。そうすることで、充実感を得て、安定した気分で生活を楽しむことができるのです。表現するということは、子どもの心を守り、情緒を安定させるという点でもとても大切なのです。
描くこと、つくることとの大人の関わり
描くこと、つくることも、子どもにとっては大切な自己表現のひとつです。その大切な自己表現をしているときに「○○を描いてみたら?」「△△を作ったら?」という親や保育者の声は必要ありません。むしろ、親や保育者に言われたから描いた、つくったものは自己表現でもなんでもないのです。子どもが自ら進んで描いたり、つくったりすることこそが自己表現であり、大切なのです。その出来上がった絵や作品は、大人から見れば何を描いたのか、つくったのかもしかしたら分からないかもしれません。でも、それでいいんです。「ここをもっとこうしたほうが…」など、なにか言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、出来上がったものをそのまま認めましょう。逆もしかりで、「上手だね、すごいね。」などと、褒めすぎるのもあまりおすすめはしません。なぜなら、出来上がったものを褒めるということは、結果を褒めているということだからです。つまり、子どもはそれを繰り返されるうちに上手でなければ褒めてもらえないと感じてしまうのです。出来上がったものに焦点をあてるのではなく、描いたり、つくったりしていた過程を具体的に褒めるように心がけましょう。例えば、「ここは力いっぱい塗ったんだね。」「ここをくっつけるの大変だったんじゃない?頑張ったね。」などのように、子どもがどんな思いで描いたのか、つくったのかを考えながら話すということを意識してみて下さい。どのような形であれ、子どもがのびのびと自分なりに表現したものを、大人はありのまま受け止める、そんな関わり方をぜひ心にとめておいてほしいと思います。
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