ごっこ遊びの大切さ

5つの領域

子どもたちの大好きな遊びの一つでもある、ままごと遊び。ごっこ遊びは子どもの発達の上でも大切な遊びと言われています。なぜ、大切なのか知っていると、関わり方にも違いが出てくると思うので、ぜひ知ってもらいたいと思います。

ごっこ遊びで育まれる力

ごっこ遊びを通して、子どもたちはものを知り、行動を通して他者を知り、他者を知ることで自分自身を知ります。そして、役割を演じることで社会を知り、社会の一員としての自分を知ります。
以下、7つの点からごっこ遊びで育まれる力を書いていきたいと思います。

①愛情の体験を確認する


お世話ごっこで、子どもたちは人形のおむつをやさしく取り替え、ごはんを食べさせます。病院ごっこでは看病したりと、子どもたちの仕草や言葉づかいには、思いやりがあふれています。身近な大人にしてもらったことを今度は自分がやってみることでその体験を確かなものとして、自分の中に取り込んでいくのです。このように愛情の体験を確認することは、自己肯定感や心の安定につながります。

②ファンタジーの体験


子どもたちはごっこ遊びの中で、さまざまにイメージを膨らませて遊びます。例えば、布1枚で魔法使いになったり、ヒーローになったりして、現実の世界ではできないことを体験します。想像の世界は子どもにとっては自然なことで、その世界で存分に遊び込むことは大きな喜びとなります。魔法を信じたり、目には見えないものを信じる心は愛情や思いやりなど、目には見えない大切なことを尊重する心情に通じるのです。

③言葉を使ったコミュニケーション能力が育つ


お店屋さんごっこをしているとき、「いらっしゃいませ。〇人様ですね。〇番テーブルにどうぞ。」と、店員さんそっくりの言葉遣いになります。お客さん役の子も、「〇〇お願いします」とちょっとかしこまった言い方になったりします。普段の生活では使わない言葉のやりとりも、ごっこ遊びでは盛んにみられ、言葉を使ったコミュニケーションの体験となります。このように言葉を使い分ける力は、相手によって言葉を使い分ける社会的な言語力にもつながります。ごっこ遊びはイメージを共有しながら、会話を楽しむことでコミュニケーションの力を育みます。

④生活に必要な知識や知恵を体得する


ごっこ遊びでは、子どもたちが社会の仕組みを自分たちで再現し、発見する過程が見られます。例えば、子どもたちがティッシュを丸めてアイスクリームを作りました。すると、それを冷やす冷蔵庫を作ろうということになりました。さらに、それを売ることになり、お札や小銭を作りましたが、なかなかお客さんが来てくれないと、今度は自動車を作って売りに行くことになりました。ごっこ遊びは、次々に繰り出される新しい思いつきで常に変化していきます。そこには、家庭での生活の知恵があり、社会や経済の仕組みがあります。ごっこ遊びを通して、子どもたちは身近な生活で見聞きしたことを再現することで、社会の仕組みやその意味を自ら発見していくのです。

⑤自分と周りの人との存在を認識し社会性が育つ


お医者さんごっこには、注射やお薬を出す場面が登場します。そこで子どもたちは、お医者さんだけでなく、看護師さん、薬剤師さんなど病院で働くいろいろな人の役割に気付きます。ケーキ屋さんごっこでも、パティシエだけでなく、お店で売る係の人も大切な役割です。子どもたちはごっこ遊びを通して、社会にはいろいろな役割の人がいて、たくさんの手によって生活が営まれていることに気付きます。家族にもその目は向けられ、仕事や家事、子育てをする家族の役割を意識することとなるでしょう。これが、自分の社会の一員であるという認識につながります。

⑥表現力、創造力が育つ


子どもたちは、ごっこ遊びで必要な道具を自分たちで作り出します。クレパス、はさみ、折り紙、粘土など、これまでの造形等の活動で得た技術を駆使し、その物の性質をうまく利用して自分のイメージを表現しようとします。子どもたち自身のこうしたい、こんなものが作りたいという思いによる創造的な表現活動なのです。

⑦心情の発露としての側面


例えば、大震災の後、子どもたちの間では地震ごっこが見られることがあります。これは、子どもたちは遊びを通して、自分たちにはとうてい理解できない地震という体験となんとか折り合いをつけようとしていたのではないかと考えられます。また、人形を乱暴に扱う子がいたときには、ただその行為をいけないことだからと止めるのではなく、その行為の裏側にある子どもの思いに寄り添って考えてみることが必要です。ごっこ遊びは子どもにとって負の体験や理解しがたい体験の発露となる場合があり、それは子どもなりの生き抜く力であると同時に、大人の側にはそれが「子どもの最善の利益」を考える手立てにもなり得るのではないでしょうか。言葉では自分の気持ちをうまく表現できない子どもたちの気持ちの表出としてとらえる視点も大切なのです。

ごっこ遊びの大切さがお分かりいただけたでしょうか。ですが、物的・人的環境ひとつで行きも死にもする遊びでもあるのです。次の投稿では、ごっこ遊びの環境の大切さと関わり方のコツについて書いていきたいと思います。

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